東京事務所

移転連載コラム

Vol.

01

安井建築設計事務所ってどんな会社?風通しの良い会社を「まち」にひらく理由

2023.07.18

コラム

長らく半蔵門駅近くにオフィスを構えていた安井建築設計事務所(東京事務所)は、2024年1月に神田は美土代町への移転を決めました。開発が著しい渋谷や虎ノ門、丸ノ内などではなく、あえて神田のまちへ!しかも、築57年のオフィスビルをリノベーションし、各階をつなぎオフィスの1階をまちにひらいていくと言います。そのきっかけは、移転に際し、社内で開催されたコンペティションでした。何十もの応募案の中から、見事一位に選ばれた案を元に、現在設計が進められています。

オフィス全体に付けられた名称は「美土代クリエイティブ特区」。本連載では、これまでの安井建築設計事務所(以下、安井と表現)が辿ってきた道のりと、社員みなさんの新しいオフィスへの想いを紐解き、移転プロジェクトを追っていきます。

まずは、オフィス空間の社内コンペで1等となった<Jチーム>の3名の皆さん、具体的な移転業務に関わる<移転準備室>の3名の皆さんにお集まりいただきました。まずは会社のことについて。安井ってどんな会社ですか?


— 今日はお集まりいただいて、ありがとうございます。今回は、移転の話に入る前に、安井ってどんな会社なのか、そんなところからお聞かせください。

小林:入社前は組織設計事務所には堅そうなイメージがありました。建築設計を続けるかを迷っていた学生時代に、インターンへうかがったのが最初の出会いでした。働いている人たちがすごく明るい印象を受けて、そういう会社だったら伸び伸びやれるかもと思い入社を決めました。上下の風通しが良くて本当にしゃべりやすい。この移転チームにも副社長がいるくらいですし、社長に直でプレゼンする機会も頻繁にあります。

小林寧々(設計部):Jチームメンバー。移転先のオフィスの企画から設計を担当。移転先オフィスビルの改修設計も担当。

— インターンのときの印象と、入ってからの印象は、あまり変わりませんか。

小林:むしろ入社後の方が「何でもやっていい」というイメージが強くなりました。自分からプレゼンしていってチャンスをものにできる良い体験でした。

— 松原さんはどう感じられていますか?

松原:世の中が効率重視に向かっている中で、安井の良さは「優しさ」と「人を大事にする」点だと感じています。今は、個人が社会とどれくらいつながりを持っているかの度合いを、設計にも反映できるかが、設計者に求められていると実感しています。技術も専門性もより分化していく中で、常に新しい情報を得て動き続けていくには、どういう場所をどう持つかが大切です。そういうことをより促進させていくためにも、外部や他ジャンルの人との繋がりが必要だと思っています。

松原輝(企画部・ビジネス創造部):Jチームメンバー。社内の意見を広い視野でキャッチしながら、コンセプトづくり・デザインに参加。

― 今回、新しい東京事務所のコンセプトである「美土代クリエイティブ特区」は1階をまちにひらいてまちの人との交流を重視したプランになっています。「いろんな人と繋がる」や「協業」といったキーワードに見られる、社内に閉じず外へつながっていきたいという意識は、東京事務所移転前から共有されていたものだったのでしょうか。

小林:そうですね。社内には「建築だけでなく様々な文化と繋がっていきたい」という気持ちを持たれている方もいて。会社のビルの1階で、クラシックコンサート開催したこともありました。もっとその風土を身近にするため、今回新事務所を提案する上では、建築だけではなく、外のまちまで広く見て、まちの人とも接することができるよう、1階をひらこうよという提案に至りました。

松原:Jチームとしては、その部分の意識を重要視しました。一番根っこにあったのは、内向きになってしまうことへの危機感です。内向きって心地よいじゃないですか。図面を描いて、自分のやりたいことをプレゼンして、外からの情報をシャットアウトして。でも、それじゃあ今の時代には合いません。

稲山:私も同じような問題意識を思っていました。安井は若手のパワーが強いのですが、上の方々の器が大きいこともあり、内部のコミュニケーションはしやすい風通しの良さがあります。

大谷:風通しの良さが、確実に良い建築設計につながってきていると感じています。それは、人として仕事を受けて、建築物を建てることに対する責任、意識を親切すぎるくらい一生懸命に持つということですから、とても良いことだと思います。

稲山凌生(設計部):移転準備室所属。主に移転に関する社内ワークショップをメインに担当。
大谷毅(ファシリティソリューション部):移転準備室 リーダー これまで東京事務所内のリニューアル設計を担当してきた。

— いまの会社の状況はどうですか?

杉木:若い世代にも本当に元気な人たちが多くて、新しいことにチャレンジする空気がより大きくなっていると感じます。実際にプロジェクトのバリエーションも増え、海外案件も増えてきています。上の世代は、下の世代に任せてみることで、若い世代は任せてもらえると感じ、やりたいことにチャレンジできる社風へどんどん変化してきました。そういう流れと社会への意識から、Jチームでは1階に特化した提案をしようとなりました。

杉木勇太(設計部):Jチーム 我らのリーダー。オフィス全体のコンセプトづくり、設計のとりまとめ。
吉岡駿介(設計部):移転準備室所属 副リーダー。現在、移転先既存オフィスビル全体の改修設計を主に担当する。

— 会社がいきいきと変化してきた中で、それでも課題があるとすると、どのようなものでしょうか。

稲山:社内の風通しが本当に良い一方で、内向きでシャイな人が多いのも現状です。だから、内に向いている人たちを少しでも外にひろげてあげることができれば、今の会社の雰囲気をより良い方向に変えられると思っています。私は、Jチームではありませんが、彼らが提案した1階のビジョンを実現させていくために、ワークショップ活動を中心にアクションを起こしていくことを企画しています。

杉木:良い意味でも悪い意味でも真面目すぎるところはあるので、稲山さんたちとも一緒になって、もうひとつアグレッシブな社風に変えていきたいです。元々、建築技術的にはとてもしっかりしたものを持っていて、エンジニア気質の強さはすばらしい。そこにアーキテクト的な思想も盛り上げていきたいです。

— 東京事務所の変遷とこれからの会社への熱意をうかがえました。ありがとうございました。

社内コンペでは、社員の皆さんの参加率がとても高かったと聞いています。次回からは、より具体的な移転の話、社内コンペの実施やJチームの結成についてうかがわせてください。

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